ティファニーからマクドナルドまで

ところが、深く考えるより先にわたしのお買い物魂が疼きだす。ネット検索しているうちに、あっという間にドンドンと強欲な炎が燃え上がる。
どうせなら、Tiffanyがよくない?こうも思い始める。
わたしはさしてブランドが好きなわけではない。Tiffanyならネックレスを持ってる。けど、めったに登場させてあげられていない。贈り手への愛着に薄いからだ。

でもブランドものの結婚指輪ってさあ……?かつてのわたしなら、うげっと思うだろう。ところが、男性の指に光るTiffanyって素敵じゃない?とすら思うのだった。
意外なことに彼はTiffany が似合う。ってほんまかいな。

その一方。わたしはかの『101回目のプロポーズ』で登場していたボルトの指輪が忘れられないのだ。僕にはお金がありません……という男性に向かいボルトを指にはめてみせたヒロイン。
あんなに美しい指輪ってない……感涙にむせぶTV画面の前の女子。大好きな武田鉄也の大好きなワンシーンだ。
そういう指輪ってないんだろうか?素材はなんでもいい。鉄とかで腐食すると困るけど、適宜作り直してくれたらそれでいい。例えば未開の土地を歩いていて、たまさか足に触れ拾い上げたボルト。
または現場の職人さんが、友情の証としてつくってくれた一品モノ。

現実的に考えると、Tiffany の方が安くて手軽に入手できるというわけだった。
わたしのTiffany に対する気持ちを軽く見てもらっては困る。イメージ的には『The Great Gatsby』のアメリカ金ぴか時代に富裕層が御用達としたブランド。
映画でも夢のようにゴージャスなティアラだかをTiffanyは提供していた。
こうして突きつめるとより軽薄なのには、我ながら驚かされる。が、肝心なことがもうひとつあった。昔アメリカだかのポップシーンに登場した歌に、こういう歌詞があった。
We have nothing in common. (共通点って何もないよね。)彼を見るたびこの歌詞を思い出したわたし。その歌は確かこう続く。~でも『ティファニーで朝食を』はふたりとも好きだよね~と。
それがカポーティの小説を指すのか映画を差したのかは知らない。そして両方とも読んだことも視聴したこともない。けれど彼にこのタイトルをもじって告白したのだった。
わたしが世界で一番好きな場所はマクドナルドだと。自由かつ平等をどこよりも感じる場所。だから最初のデートはそこで会いましょう。こうして誘ったものの、彼には見事にすっぽかされた。
待てど暮らせどこないあの人を待ち続け、わたしはマクド(大阪弁)のバニラシェークをすすった。