婚約指輪や結納って古い慣習だと思うのだった。けれどもこれほど現実的な話もない。
兄はかなり本格的な結納を姉の実家と交わした。そのときくだんのジジババの人形を見たときには、発狂しそうになった。なんという浪費だろうか。
後日姉にあのジジババ人形ってどうしてるの?と聞くと。知らな~いと無頓着に言われた。本家の叔父が頑張って結納をとりしきってたんや……と、はんなりとした金沢弁で言う。
そればかりか、お腹すかん?クッキー焼いたけど、お土産に持って帰る?とまったりと帰宅を促される。姪をベビーシッターで預かってあげたあげくがこれだ。自転車で怒りまくって考えた。
お姉さんのクッキーは確かにおいしい。が、もうちょっと気を遣ってくれたらどうなんだろう。
By the way, 結納って本人というより、完全に家どうしの問題なんだなと実感。
お姉さんをお嫁に“もらう”時って相当な物入りだったわね~と母はため息をつく。その一方で、姉は姉でわたしに言う。結婚式はとにかく疲れたわ~。もう二度とやりたくない!!と。
なぜならお兄ちゃんと添い遂げたいから?妹のわたしは聞く。すると姉は答えた。ううん、違う違う。いい人がいたら再婚して是非とも人生をやり直したい。でも式自体はもうしたくないなあってこと!!
風がそよぎ柳もそよぐ。いっそ自転車をとめて、もらったクッキーをちょっとここで立ち止まって食べようか。この辺りは緑が濃い。道路も広い。こういう景色の中で食べる方がクッキーもおいしいだろう。
こういう瞬間ってあるもんだ。ちょっと休憩して、自分の人生自体を眺めてみたくなる瞬間。
結納って農村社会における風習の遺物じゃないだろうか。
わたしはずっと四畳一間のアパートで同棲を夢見た人間。その延長でそのまま入籍するって運びを夢見て、妄想の毎日だった。